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銀の月 蒼の風 黎明の海

銀の月 蒼の風 黎明の海

13600Hit(光より~)





 時は遡り、未だ『例のあの人』が善人(?)だった頃。世は平和だった。緩やかな

時に身を任せて、魔法使い達は穏やかな日を送っていた。





「ん? アルバス、何やっている?」

「ロウヤ殿。ニコラス氏と賢者の石を作っていたんです」

「お邪魔しております」

「あぁ。....賢者の石か。頑張れよ」



 ロウヤは研究室で熱心に「あぁでもない」「こうでもない」と悩んでいる二人を放って

もう一人の弟子である、リドルの方へ向かう。あぁ、違った。リドルは自分の名前が嫌いらしくて

『ヴォルデモート』という名前に改名したのだ。ロウヤはヴォルデモートの事を

長いからと言って、『ヴォル』と読んでいる。



「ヴォル........ヴォル?」

『此処だ』



 ロウヤはヴォルデモートの自室に行ったが、姿が見えなかった。その部屋に居たのは

一匹の黒い猫だけ。ロウヤはもしやと思い、名を呼んでみる。すると、予想していた通り

黒猫が返事をした。





 えぇっと? これは如何いう事だろうか...。もしかして、術に失敗してこうなったとか?

いや、ありえない。私の弟子がそんな間抜けな事をするはずが無い。では一体何が原因だ?

予想も付かない。ヴォルは優秀だからな~ よほど難しい魔法でも使わない限り

失敗するはず無いのだが...。



「とりあえず、どうしてこうなったんだ?」

『...変身呪文だよ』

「......早く戻れば良いじゃないか」



 変身呪文と聞いてロウヤは安心した。「そうだよな、お前が失敗なんてするはず無いよな」

と笑っている。が、ヴォルデモートは何も言わない。そして、元に戻るような素振りも見せない。

之はもしかしてとロウヤは恐る恐る聞く。



「ヴォル...もしかして戻れないんじゃないよな?」

『......戻れない

「何だって?!」

『だから、戻れないって言ったんだよ(溜息)』





 ハァって、こっちが溜息吐きたいよっ 何が如何なってそんな簡単な呪文で失敗するんだ?!

誰か教えてくれよっ あの優秀なヴォル君がなんで失敗を? あのホグワーツでも

最優秀で卒業したあの優等生がなんで超簡単な魔法で失敗するんだよ!!

あぁ、誰か私を助けてくれ...。



『......ロウヤ?』

「君に呆れてるんだよ;」

『俺さ「ヴォル?」

『...僕だって、好きでこうなった訳じゃないんだよ;』



 ロウヤがニコリと笑って名を呼ぶと、ヴォルデモートは急いで言い直した。ロウヤはヴォルデモートの

『俺様』という一人称が嫌いでせめて自分の前では昔のように『僕』にしなさいと言っている。

それほど、嫌い...いや、可笑しいのだ。まだ幼い顔を持つ青年が『俺様』と言う所を

是非とも想像してほしい。ロウヤは最初、その一人称を聞いた時、一時間笑い続けた。

あれから、ヴォルデモートはロウヤの前で『俺様』と言わないようにしている。もし、言ったら

三途の川までの片道切符を手にする事になる。



「それより、ヴォル。死喰い人達はどうしてる?」

『元気にしてるよ。って、如何でも良い事なの?』

「時間が経てば戻るだろ。ヴォル、来い」



 さも如何でも良いみたいな感じで、ロウヤはヴォルのベッドに腰掛けてヴォルデモートを呼ぶ。

ヴォルデモートはロウヤに逆らえる筈も無く、ゆっくりと近づいて行く。そんな用心深いヴォルデモートに

ロウヤは眼を細めて笑う。基本的に、ロウヤは大声で笑ったりしない。今みたいに

眼を細めて笑うか、口だけ笑っているかどちらかなのである。



『何かな;?』

「そう硬くなるな」



 そう言って、ポンと膝を叩く。つまり、此処に乗れと言う事だ。それを理解したヴォルデモートは

顔を赤らめる。といっても、猫の姿なので分かる筈も無い。が、ロウヤは違った。



「顔が赤いぞヴォル」

『...煩い(///)』

「ヴォル、おいで」



 心地よいロウヤの声に誘われて、ヴォルデモートは殆ど無意識にロウヤの膝に乗る。

そして、すぐに我に変える。急いで膝から降りようとしたが、ロウヤが金縛りの呪文を唱えたため

それは出来なかった。



『ロウヤっ』

「何だ? あぁ、やっと触れる」





~ここからは音声だけでお楽しみください~







『ちょ、やめっ」

「柔らかいな。それに...暖かい」

『ロウ ヤっ っ』

「何? 結構いいの? ここ?」

『違っ ぅぁ』

「ふむ。誠、興味深い」

『ちょっ いい 加減にっ してっっ」





~通常Verに戻ります~







「ケチだな~ 肉球ぐらい良いだろう」

『良くないっ くすぐったいんだよ』

「気持ち良さそうだったじゃないか」



 そう、ロウヤはヴォルデモートの肉球を触っていたのだ。前足と後ろ足で如何違うのかと

ヴォルデモートの声を無視して触り続けていたのだ。



『このっ 変態っっ』

「ほぅ? 私の事をそんなふうに言う口は塞いでしまおうかな?」

『僕は今は猫だよ? そんな事出来ないでしょ』



 ヴォルがそう言うと、ロウヤはニヤリと笑う。それはまるで、悪戯を決行しようとしている

某忍者の様でヴォルデモートは少し鳥肌が立った。<猫なのに?



「この私に不可能などと言う文字は無い」



 ロウヤは杖を取り出して振った。するとポンという音を立てて、人間の姿に戻った

ヴォルデモートがロウヤの膝の上に座っていた。自分が元に戻ったのを驚きの目で見ていた。

そして、直ぐ目の前にあるロウヤの整った顔を見て顔が朱に染まった。急いでロウヤの傍から

逃れようとする。金縛りは何とか解いたから後は逃げるだけだった。だが、ロウヤがそんな簡単に

逃がすわけも無い。



「ヴォル」

「っ 離せっ」



 ヴォルは必死に抗うが、ロウヤの腕はビクリともしない。もうあと数センチで唇が

触れると言う所でアルバスの声が聞こえた。



「ロウヤ殿~~!! 出来ましたぞっ」



 その声は結構近くまで来ていて、あと3分もしない内に此処に付くだろう。

ロウヤは「やれやれ」と言って、ヴォルから離れた。扉を開けて部屋を出て行く際に

ヴォルの方を向いてシニカルな笑みを浮かべていった。



「続きはまた今度な」





パタンッ



「......絶対掴まるものか」



 ヴォルは脱力して力なく言った。けれど、きっとまた掴まるだろうとヴォルは思った。

自分は逃げられない。あの闇を思わせるような漆黒の眼に見つめられたら最後。逃げられる

自身が無い。きっと、囚われる。



「ちくしょう。ルシウスに当たってやるっ」<哀れ...



 だが、ふと思う。アルバスにもこんな事をしているのだろうかと。そう思うとヴォルは

無性に腹が立った。何故腹が立つか分からない。ヴォルはそんな感情を知らない。

今までそんな思いをした事がなかったから。



「一体、何なのだ。この想いは...。俺様は...」





 ふっ、そんな事ない。あいつは男だ。そして、俺様も男。そしてなによりも、あいつには

恋人が居るではないか『月姫』という美しい女が。頭では分かっている。だが、この心の

奥底にあるモヤモヤとした物が俺様の心を蝕んでいく。抑えなければ。あいつを、困らせたくない。

俺様は唯、あいつの笑顔が見れればそれで良いのだ。











































05/11/30


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